2015年07月25日

幽 vol.23 特集幽霊画大全

 日本唯一の怪談専門誌。
 一応、LOVELOG時代から半年に一度の感想を書いてきたのだが、前号はいまひとつの読後感にて、多忙にもまぎれて書きそびれてしまった。しかし、今号は新たにスタートした企画もあり、感触は前号よりも上。

 第一特集は「幽霊画大全」
 日本各地の幽霊画を取り上げる、という怪談雑誌の夏の企画としては王道を行くものながら、雰囲気は奇妙にゆるい。美術史を探求する学術路線ではなく、といってTVの怪談番組よろしくおどろおどろしい由来譚でもない。
──こんなことが伝えられておりますが、さあ本当のことかどうか
──いやあ、そんなこともあるかも知れんですなあ
 扇風機がなま暖かい空気をかき混ぜる寺の本堂で、団扇で蚊を追いながら耳にする、住職と親戚の大人たちとの会話のようなゆるさなのである。クーラーをつけずに読めば、小学生時代の夏休み気分だ。
 尚、写真家・金子富之による「幻想写真画」に5人の作家が掌編小説を寄せる「心霊風景」なるコーナーもこの特集内の一企画となっているが、これは怪談文芸誌ならではのもの。ことに皆川博子の「蜘蛛が踊る」と水沫流人の「陥穽」は、幻想小説の良質なエッセンスに満ちている。

 連載小説では朱野帰子が「花嫁衣装」で新登場。 
 結婚生活にともなって、新婦が引き受けることとなる夫の一族との現実にありそうな、しかし、心への大きな負荷となる関係を鬱々と描いた怪談。
 幻想系ではなく、「怖い話」としてのインパクトを満たした佳作。ただ、女性視点の作品ゆえ、中年男の私には主人公の心理はごく浅くしか理解できないのではあるが。

 「虚談」と称する京極夏彦の新シリーズは、実話怪談調の作品ながら、ひとひねり、もうひとひねり、という、怪談小説技法に実験を試みた、しかし、それでいながら正調な「怪談」
 個人的には近年の京極作品は、文章に妙なくどさを感じていたのだが、本作ではそれがなかったのも好印象。

 小野不由美の「営繕かるかや」シリーズは、今作については、やや平凡。ただ、これも今作の主人公と性別の異なる私には理解の及ばないところがあるのかな、とも。
 そういえば、これも語り手は若い異性となる有栖川有栖の「濱地建三郎の事件簿」シリーズも、怪談らしい怪談で楽しめたのだが、ややこぎれいに小さくまとまってしまった印象。

 コラムや怪談実話の競作をまとめた新コーナーは、その名も「おばけずきフォーラム」 インタビューや書評など、これまでにもあった各コーナーをひとつにしたようだ。
 特に書評は、自分が普段探さない書店の棚に案内される楽しみがある。本はネットで購入することも増えているのだが、表層的なジャンル分けから脱しえないネット通販のピックアップとは、ひと味もふた味も異なるところ。

 巻末には「とれたて怪談実話」として、三作家の短編が収録されている。
 内藤了「獄舎跡」郷内心瞳「おしるし」貝田和「小袖山」
 実話というのは真実と同意ではなく、そもそも真実というのは何か、ということを問いに、自身の足下がぐすぐすと崩れていく感覚につつまれる三つの逸話。ストレートで即物的な怖さとは異なる怪談だ。

 満足度は上がったものの、連載作品には抜群と感じられるものがなかったのはやや残念。ということで★は3つ。
posted by Sou at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:怪談・ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする