2015年12月12日

人形遣い

 北欧系ミステリーに続き、近年出版の増えたドイツミステリー中の一冊。
 
 作者のライナー・レフラーは、本作によってデビューした50代の新人作家。
 遅咲きだけあって、と言えるのか、よくもわるくも安定感の高い危なげの無さを持った作品だ。猟奇的な殺人を繰り返すシリアルキラー「人形遣い」、対峙するはドイツ警察随一のプロファイラーながら、協調性を持たないが故に敵を作りやすい中年男の事件分析官・アーベルと、彼の指導を受けるエリート女性捜査官・クリスト。さらに、プロファイリングといった手法に反感を持つ巨漢のベテラン捜査官や、アーベルが協力をあおぐ、奇人の法医昆虫学者、といった登場人物のプロフィールを列記するだけでも、おお、王道、というところである。
 加えてストーリーの展開も、二人の捜査官の気持ちの動きや、ピンチに陥ってあわや、というくだりなど、こういう作品はこうでなくっちゃな、という読み手の期待を無駄に裏切ったりしない律儀さがあり、同じオッサンとして妙に納得するところである(笑)
 
 そういったある種生真面目なストーリーは安心して読むことができるのだが、ただし、もう少し意外性があっても、という読後感はあった。
 妙なヒネリや、定形外のキャラクターや、なぜこだわったのかわからないような記述があれば、読むときには退屈してしまうのだが、読み終えてみるとそれがその作家の「味」として記憶に残る。食べ物で言えば苦味のような、そこだけを食べようとは思わないが、無くなってしまうと妙に物足らない、そういう個性のことである。
 
 面白い作品である。
 ただ、そういう個性がぼやけている印象が残り、そこは次作に期待する、ということになるようだ。★1つ半。

2015年12月05日

呪い襲い殺す

 インパクトあふれるタイトルだ。
 ひょっとすると、記憶に残ることではホラー映画史上でもベスト30くらいには入りそうなインパクト。……しかしなあ、そういうことで手に取るホラーの愛好家って、どのくらいいるんだろうか。まあ、それよりも一般の観客にアピールするほうがビジネスとしては成功するということなのだろうが、うーむ。
 
 さて、そういう飛び道具みたいなタイトルの、原題は「OUIJA」
 本邦ではコックリさんなどとも呼ぶお手軽な交霊術のこと。ティーンエイジャーたちが、これによって呼び出した霊によって次々と……、という「心霊ホラー」としてはタイトルに似ないオーソドックスさに加え、展開の方も実にオーソドックス。
 レーティングを考慮したのか、お色気系の女性は登場しないものの、ジャンルの定番の高校生たちが、これまたスケジュールに従うかのように死を遂げていくところは、アメリカンホラーの伝統芸。
 展開はおおよそ予想がつき、それを大きく裏切るようなものはないものの、本作は観ていて退屈を覚えることがない。きちんとした環境で撮影がなされた画は、ジャンルのものとしては安っぽくなっておらず、また、オーソドックスな筋立てとすることで、くだくだしい説明を省き、良好なテンポを獲得できているのもポイント。
 
 そして、もうひとつ加えれば、主演のオリヴィア・クックの魅力がある。
 欧米人にしてはやや幼い顔立ち、整っているということだけならば女優としては平凡だが、表情の豊かであることは抜群である。記憶しておいてもいい女優かな、と検索してみたところ、すでに評価も高まりつつあるらしい。
 
 ジャンルの教科書に載せても良いような正統派ホラー。
 カーペンターや、トービー・フーパーのように、得体も知れないままに観るものを巻き込むような情熱の奔流はないが、基本の出来た優等生のまとまりのよい作品も、私はけっして嫌いではない。★3つ。
posted by Sou at 20:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画:ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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