2016年03月20日

笑う赤おに

 本作は、雀野日名子名義による最新の小説だ。そして現在、作者は別名義を使用した執筆活動に移っているらしい。
 その理由については、作者のBlogに記されているのだが、そういった気持ちの変化も、たしかに感じさせてくれるような社会への視点を備えたストーリーである。
 
 大雑把に説明すれば、地方都市を舞台にしたミステリー……というよりはサスペンス?いやいや、ホラーに分類してもよさそうに思うが、「娯楽小説」として扱うことには、ややひっかかりを覚えなくも無い。
 
 登場するのは、将来の見えない非正規労働者の若者と、経済的には安定しながらも陰湿な感情に満ちた主婦の世界に苦しむ30代の女性、そして家庭内の不和に悩む中年男。
 どこにでもいそうな人々であり、また、それぞれが抱える苦悩も、ことさらにデフォルメされた悲惨ではないのだが、なんとも息苦しく、希望が見えない。
 彼らが抱える諸問題は、単なる「舞台装置」などではなく、日本のあちらこちらにいまや普遍的なものとして存在している。
 そして彼らが、一人の「犯罪者」と目される男と遭遇したとき、彼らの抱える苦悩は、彼らをどのような行動に走らせるのか。
 日常のレールを外れることの無いままに、恐怖はそこに立ち上がってくる。

 と、こう書いてしまうと犯罪実話めいた、暗鬱で硬質な作品をイメージしてしまいそうだが、この作者の作品に共通して文体は軽やかで、同時代性を備えた道具立てによる展開はスリリングであり、読後感も、少なくとも一見するところでは悪くない。
 ただし、私には本作の謎解きは、映画で言えばエンドロールで演じられているもののように感じられたのだが。
 
 『幽』怪談文学賞出身では、勝山海百合と並んで好きな作家だったので、また、この筆名を使う創作の世界への復活を、強く願いたい。★3つ。

2016年03月06日

賤ヶ岳

 信長の後継者争いというのは、本来ならば戦国末期の一大イベントであったはずなのだが、どうもフィクションの世界で取り上げられることが少ない。これは、一方の陣営である柴田勝家側の武将がいまひとつ知名度が乏しい、ことに、知略を用いる軍師タイプの武将の不在が大きいように思う。
 なにしろ、秀吉側は、秀吉自身が織田家中随一と言って良い智謀の持ち主であることに加え、軍師の黒田官兵衛も加わっているわけで、これは猛将ぞろいの体育会系めいた柴田勢には、どうも勝ち目がありそうにないのである。
 
 そこで、ということなのか、本書では柴田勝家の側近・毛受勝照を軍師役としてスポットを当て、複雑な政治的取引に疎く、秀吉の策略に追い込まれていく主君・勝家を、懸命に補佐する忠節の智将として登場させている。
 史実の勝照がそういった立場にあったのかはよくわからないのだが、こういったキャラクターの登場によって、新興企業に追われる斜陽の老舗めいた柴田勢の悲哀が、いっそうくっきりとしたものとなっている。
 
 大戦力を率いながら優柔不断な信長の息子たちや、軍略の才を持ちながら、それを振るう機会を得ることができない滝川一益、秀吉との個人的な友誼と自身の将来、そして勝家の恩義の間に挟まれて苦悩する前田利家など、その時代に生き残ろうとするそれぞれの武将の判断も、賢愚のみに分かつことの出来ない群像として描かれている。
 
 骨太の文体と筋立て。正統派の戦国歴史小説。★2つ。
posted by Sou at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月01日

ネットストアHONのプログラム終了

このBlogでは、ネット書店である【丸善&ジュンク堂書店】ネットストアHONなるプログラムを用いていたのだが、なんとこれが、先月末日をもって終了してしまった。
いかにアフィリエイト目的のBlogではないとは言え、これではさすがによろしくない。
一応、現在、紀伊国屋書店のプログラムにも参加しているので、そちらへ付け替えようかとも思案中なのだが、随分な手間となりそうで、げんなりとしている。

また、新刊書店では取り扱いのないものについても、語ってみたいものは多く、さてはて、頭の痛いことである。

posted by Sou at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | Blogについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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