2016年05月15日

深い森の灯台

 邦題と表紙のイメージから、ホラーと言ってもダークファンタジー系であろうか、と想像していたのだが、案に相違してこれはかなりオーソドックスなモダンホラー。
深い森の中に立つ灯台で、それを建てた男が自殺した。死の直前の彼から謎のメッセージを受けた保安官代理主任のキンブルは、この土地ではるか昔から恐るべき出来事が続いていたことに気づく。さらに丘陵の周辺で次々に不穏な出来事が起こりはじめる。事故を起こし幻を見たキンブルの部下。夜が来ると攻撃的になる動物たち。そして森に正体不明の青い光が現れ、新たな惨劇が……。
                  本書裏表紙 内容紹介より

 キンブルが探り出す町の暗い過去、ことに19世紀の鉄道工事に関わる歴史や、そこに現れる「魔」の佇まいは、欧米のホラーにおける定番だ。また、意図的な破調や、難解なテーマ性などもないので、そういう意味では奇抜さというものは感じられなかった。
 とはいえ、定番であればこその読み手を退屈させない細かな工夫は当然あり、たとえば、舞台の多くを、ネコ科動物の保護施設というユニークなものとしたことで、複数の動物たちの不可解な振る舞いによって、「魔」の輪郭が浮かび上がってくるなどは巧妙なそれであろうし、クライマックスへ至るところでの「仕掛け」の意外性も低くはないと思う。
 オーソドックスであることと、この工夫とのバランスが良好な作品なのだ。
 
 ただし、登場人物の抱える苦悩に、あまり感情移入できそうなものが無かったことは事実。これが、いまひとつ作品に愛着の湧かなかった理由だろう。もっとも、作者は1982年生まれと私よりもはるかに若いわけで、そのあたりのズレはいたしかたないものではあるのだろうが。★2つ。
posted by Sou at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:怪談・ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする