2015年11月07日

ぼぎわんが、来る

 第22回日本ホラー小説大賞受賞作品。
 
 題材はこれぞ怪談とも言うべき王道。メインの登場人物も若者ではなく、分別盛りの30代。加えて岡本綺堂を敬愛するという作者の文体は、過不足のない、端然としたものとあって、インパクト狙いのあざとさがない。

 その一方で、キャラ立てや個々のエピソードには、作者の個性があり、ことに「意識高い系イクメン」とでも言うべき登場人物の鬱陶しさには、特筆したい同時代性がある。また、語り手が交代することで物語の謎が解け、一方で新たな謎が生まれる展開などは、実に鮮やかな仕掛けである。
 さらに、導入部における怪異との白昼夢のような遭遇、人の心の闇、魔を祓う能力者の悔恨、史書にかすかに残る「ぼぎわん」の痕跡など、適宜提示されるホラーに必要な要素を備えたパーツのそれぞれもぴたりとはまって、読み手の関心を物語の外にそらすことがない。

 ただし、あえて文句をつけてみるならば、正直なところ本作には、記憶に深く刻み込まれるような、突出した着想はないように思う。ホラーの王道を行くものであるだけに、意外性におおきく振れた暴勇に乗るところがないのだ。
 しかし、そんなところまで要求の水準を上げなければ、指摘すべき瑕疵が、本作にはない。けっして低くない水準でバランスのとれた作品は、そのバランスの良好であること自体が、たぐいのない個性となる。そんな感想を読後には得た。

 巻末の選評での、綾辻行人のコメント
歴代ホラー大賞受賞作の中でもとりわけ、広範な読者にアピールする力を持った逸品だと思う。

 この言葉に全面的に賛意。

 私的本年度ホラー小説ベスト10には確実に入ると思う。★3つ。
posted by Sou at 20:58| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書:怪談・ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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よろしくね〜
Posted by K@zumi at 2015年12月22日 21:58
TBありがとうございました。

どうもこのところ、あまりBlogをのぞく時間がなくなっており、遅くなりまして失礼しました。
Posted by Sou at 2015年12月23日 17:29
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