2016年08月19日

深夜倶楽部

 都筑道夫による連作怪奇小説集。
 
 全7編
「死びと花」
「鏡の国のアリス」
「姫はじめ」
「狐火の湯」
「首つり御門」
「幽霊屋敷」
「夜あけの吸血鬼」

 岡本綺堂の代表的な怪談小説集に、「青蛙堂鬼談」がある。
 青蛙堂主人なる人物がホスト役を務める怪談会のスタイルで、様々な話者によって、多様な鬼談が語られる、という作品なのだが、本書はその綺堂をモダンホラーの書き手として高く評価する都筑道夫による、都筑版「青蛙堂鬼談」。
 
 ……というところではあるのだが、実は本書の各話はややページ数が多すぎて、いまひとつ構成にかっちりとしたところが感じられない。加えて、男性向けの娯楽誌風の描写が各編ごとに盛り込まれているので、ストーリーから浮いてはいないものの、怪談を楽しむ目的にあっては、やや雑味が混じる。
 本書の中でも、登場した著者自身が語るように、怪談は本来短編のものだということなのだろう、この7編の中でも、さらに細かなエピソードをいくつか連ねたスタイルのものの方に、精彩が感じられてしまうのも、そのためなのだろう。
 
 それでも不必要に構えたところのない、きりりとした簡潔な文章で、しかし、現実と幽冥のあわいを往還する筋立ては、さすがはマイスター都筑、の実感がある。その典型は本書の第一作目、北陸の旧家で、旧友から奇妙な「演技」の依頼を受けた役者の過ごす一夜を描いた「死びと花」。
 より短いエピソードでは、「姫はじめ」の中のひとつ、好条件のアパートに入った売れない講釈士の、薄気味の悪い体験の顛末が、いかにも綺堂風で秀逸。
 
 ストレートに恐怖や超常現象を押し出すのではなく、不分明ながら「悪いもの」に触れてしまったという灰色の記憶を描いた物語ばかりで、20年以上昔の初版ながら、手垢のついていない印象はある。★2つ半。
posted by Sou at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:怪談・ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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