2016年10月14日

黄金の犬 真田十勇士

 作者による“真田十勇士”ものには「佐助を討て」が既にある。
 本作とは個々のキャラクターはやや異なっているものの、メンバーの中心となる才蔵と佐助の、陰陽に対比される性格付けと、ほとんど人類の外に踏み出した能力などは共通する。そして、こういった超人を登場させながら、作者のごつごつとした骨太な文体は、ややもすれば軽く感じられてしまいそうな設定に、リアリティとはまた異なる重量感を備えさせている。腕を飛ばし、首を刎ねる、そこからほとぼしる血の色の赤黒さが見えるのだ。
 
 この重量感を土台にして仕掛けられた、伝奇ものとしての奇想は、巧妙に機能して、“十勇士”が狙う、現実には不可能と言うしかない大阪方逆転の秘策も、難易度は高いながら、ゲームとしてのバランスを獲得できている。伝奇もののルールを守り、少なくとも表向きの歴史を覆すことの無い結果に至っても、勝敗の答えは、そことはまた別のところにも見出されるのだ。
 
 少々残念だったところを挙げるならば、なにしろ240ページという紙数の乏しさで、ために十勇士といってもほとんどその特技を活かすことができないものもおり、キャラクターで魅せるのは、ほぼ佐助と才蔵の二人のみとなっていることだろうか。また、敵側の徳川方に、これといった強敵が登場しないのも物足りない。この倍程度の紙数があれば、随分と楽しめるものになったことだろうとは、読後に強く感じられたことだ。
 
 個人的には、現在もっとも関心を寄せている時代小説作家である。派手すぎず甘すぎず、ただ面白い時代小説。★2つ。
posted by Sou at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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