2015年09月20日

カポーティ

 トルーマン・カポーティが、その代表作『冷血』を創り上げる過程を描いた作品。
 
 『冷血』は、1959年、カンザス州で起きた家族4名の惨殺事件を取材して書き上げたもの。文学を解する資質などまるきり持ち合わせていなかった高校生時代の私も、実録犯罪物のつもりで読んでみたものの、正直、あまり面白いとは思わなかった。無論、それは私の見当違いのアプローチゆえなのだが、それにしても犯人のうちの1人である、ペリー・スミスに寄せられた作者の同情には、なにとはなしに違和感を覚えたことは記憶に残っている。
 
 映画では、このペリー・スミスに対するカポーティの複雑な感情を精写している。
 恵まれない家庭環境という共通点から、それが作り出したどこかしら歪な性格、しかし、それをペリーに語るにおいては、ペリーの好意を獲得し、取材を成功させるための手段としての価値を、カポーティは自覚している。それでいて、真性のエゴイズムに彼の心が貫かれていたのか、といえば、そうでもない。
 ペリーの共犯者、およびカポーティの恋人や幼馴染が、いずれも男性的な資質を強く持っているのに比較して、カポーティとペリーは、これは相似するように女性的雰囲気を漂わせている。彼らはたしかに通ずるものを持っていたのだ。しかし、そこにあった感情は、共感でも同情でもなく「友情」なのかもしれないが、言葉で定義することは難しい心のはたらきのように見えた。
 
 全編に渡って抑えた演出で淡々と進められていくストーリー。時折に挿入される絵画のような見事な風景のカットと、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの、軽妙と酷薄をみせるオスカーを獲得した名演が印象的。背景となった事実についての丁寧な説明は提供されないので、事前にざっとでも知識を仕入れておけば良かった、と観てしまってから少々後悔した。それがあれば、さらに味わい深いものとなっていたと思う。
 
 傑作です。★4つ。

2015年04月05日

記憶探偵と鍵のかかった少女

 他者の記憶に潜行し、それを当人とともに追体験できる特殊能力者による、「記憶探偵」なる職業が認められた、もうひとつの現代アメリカ社会でのサスペンス。

 面白く感じられたのはこの記憶探偵なる職業の設定。
 超能力者などではなく、あくまで犯罪捜査に協力する一専門家──しかも、企業と契約、そこから派遣される職業とされているところだ。彼らの調査報告は司法の場でさえも限定的な信頼しか得ておらず、当然、主人公はヒーローめいた活躍などできない。こういったかたちでこの実在しない職業にもリアリティが与えられており、ために、登場人物の心理を丹念に読み解いていくサスペンスの楽しみは損なわれていない。
 
 ただし、特別に凝った伏線や、想像することもできなかったどんでんがえしがあるわけではなく、まずまずはストーリーは平均的な水準。それでも、マーク・ストロング、ブライアン・コックス、そして出番はそう多くないが、インディラ・ヴァルマなどの良い味のある役者ぞろいであることに加えて、落ち着いた色調の映像が美しく、派手さは無いものの手堅い演出によって、それなりにテンションは維持される。
 
 良作、かと思うのだが、やや地味でもあり、若い人が観ると刺激に乏しさを覚えるかもしれない。主人公への感情移入をするにも、観る側は中年以上であった方が容易かと思う。★2つ。

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